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博打尾ルートの先駆者・多賀谷氏

厳島合戦で使われた博打尾奇襲ルートですが、
実は使ったのは毛利元就が初めではありません。

以下「棚守房顕覚書」(p16~18)です。

「寅の年(注・永正3(1506)年)
 3月15日の祭りの日に
 倉橋島の多賀谷氏に属する者達が酔って大騒ぎをしていたので
 祭りの警備をしていた警固衆と口論になり、矢などを射る騒動となった。
 
 翌16日、廿日市の河内某と倉橋の衆が宿所で1つしかない鍋の使い方でもめ、
 神領衆が廿日市側に味方して倉橋の船を16艘壊し、
 それどころか10人も倉橋衆を討ち取り、そのうち4・5人は多賀谷氏の一族だった。

 そして、小晦日に蒲刈島から160~170艘の船が宮島へ押し寄せてきた。
 神域なので戦にはしたくなく、説明をしたが相手が聞き入れなかったため
 社家が神法をかざして追い払った。
 すると敵衆は杉の浦から博打尾へ進み、
 西の浦、瀧小路、中江、在ノ浦に火をかけた。」

よって厳島合戦から遡る五〇年近く前にこの騒乱があったことから
博打尾から厳島神社への登山道は昔からあり
それも他所の島の多賀谷氏が知っていたことから
割と知られた道であったと思われます。

さて、宮島に遺恨を晴らした多賀谷氏は意外な結末が待っていました。

「折から雨風が強くなり、敵は退きはじめた。
 その時、多賀谷兵部少輔が神社の上下のひさしより礼拝し
 そのまま乗船したが、鳥居の前で少輔と近従4人が海へ沈んだ。」

幾ら雨が強くても鳥居の浜ってそんなに深いわけじゃありません。
春の大潮だったとしても満潮時は2mぐらいなもんじゃないかと思います。
しかも水軍の将なのですから、泳ぐことぐらいできたはずなのに
不思議です。

まあ、その後も不思議な事が起きます。

「しばらくして伊予から親類の重見氏の船が20艘ほど加わって
 多賀谷氏討ちを聞き、再び船でやってきた。
 重見氏は討ち死の理由を聞くと蒲刈の衆の待つ船に戻り
 その話を聞いた人々は、恐ろしくなり、
 自分だけは助かろうと逃げ出し、横楯(水軍の船の横に置く楯)
 の上にまで上がってひしめき合っているところに風が吹きはじめ
 雨が降り、どうしようもなくなって長浜の沖で沈んでしまった。
 それを見ていた伊予からの警固衆は命あってのものだと
 逃げ帰った。その後、蒲刈は荒れ果て、人もいなくなった。」

多賀谷氏や蒲刈の衆がいきなりの暴風雨で沈んだことは
当時の人々は神域を犯した祟りだと考えたようです。
この出来事は当時12歳であった房顕の中でもかなり強烈な思い出
であったようで、覚書の中でも時々出てきます。

その後、この多賀谷氏らの幽魂が宮島付近の航路に出没し
船舶に障害を与えるので7月16日に鳥居の洲で六斎念仏による
供養を行ったのが宮島踊りの発祥であると『宮島本』にあります。

なお、この多賀谷氏の騒乱ですが、
「宮島本」では天正6(1578)年としていますが、
1555年の厳島合戦の前に江良氏との戦いで
多賀谷氏の例があるから矢を射返さないようにと、
房顕が述べているので
永正3年の説の方が正しい気がします。

また、房顕覚書は割と初めは時系列にそって書こうとしています。
この多賀谷氏の騒乱は厳島神主家・興親の死による神主家内の対立よりも
前に書かれているので永正年間中のことと考えられます。

ではなぜ、宮島本では天正年間に変わったのか?
恐らく、天文年間に多賀谷氏が滅亡したことから
天文と天正を間違えたのではないかと思います。

多賀谷氏はそもそも伊予河野家の一派で
愛媛県東予の北条を領し、
後に足利義満の手記に倉橋島の多賀谷という人物がでてくるので
南北朝の頃には倉橋や蒲刈までの島を領有していたようです。

そして、倉橋島は明応~文亀の間は多賀谷興重が領していましたが
その子・興頼は毛利氏に討たれ、子の頼重も戦死したため家が途絶えました。
これは野間氏の討伐と同時期である1555年と考えられます。
1555年は旧暦10月23日までが天文24年でそれ以降が
弘治元年となるので、多賀谷氏が滅びたのは天文年間となり、
末文である「ソノ後ハカマカリニ荒レ果テル人躰ナシ」
が多賀谷氏滅亡の天正年間のことだと思ったのかもしれません。

もっとも、倉橋の多賀谷氏は滅亡したようですが
蒲刈の方の多賀谷氏は毛利氏に仕え、
毛利秀元に従軍して朝鮮出兵に行った記録があるようです。
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主に毛利元就から浅野長勲までの安芸の歴史に関するブログです。初めての方は目次へどうぞ。

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