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「広島はすごい」感想

新潮新書
「広島はすごい」(安西 巧著 2016年発行)

を読んだのですが、
広島本は色々ある中でちょっとこれは異彩を放つ本でした。

今まではご当地本の一種としての広島本か
地元出版による広島本だったのですが
今回はそのいずれも該当しない。
それと、著者は福岡出身の方なのですが
実際に広島に住まわれて
日経の支局長として活躍されているので
広島の街を経済的な観点から
客観的だけど熱を込めて語って下さっている本です。
なので、今までと違った視点から読めて面白かったです。

著者の方に言わせると広島人気質を例えるなら

「群れない 媚びない 靡かない」


ではないかと思われたそうです。
あ、え?そうかなぁ、そんな孤高を貫いちゃないけど・・・
カープとか県人会とか結構群れているけど・・・
と思ったんですが、読むと納得しました。

群れていても適度な距離を保ち
損と分かっていても権力には媚びない
金や地位に靡かない
そういう職人気質を指しているのだなと。

で、経済的な観点からが主なんですが
歴史的な観点から広島人を検証した章があるのですが
そこで主に出てきているのは村上武吉。
あ、え?伊予の人だけど?
と思ったんですが、織田・豊臣に決して屈せずに
戦い抜いたところは広島らしいのではないかと書かれていました。
ああ、うん、そこは確かに伊予よりもとは思うけど
島気質な気もせんではないかなと。

一応、毛利家や隆景のこともちらっと出てくるんですが
読めば読むほどやっぱり、広島人気質は
毛利家のほうがやっぱり当てはまるんではないかと思ったのです。

例えばp70の「リーダー不在の地」
会議をしても長引いて、なかなか結論が出ない。
・・・、うん会議は毎回結論出んのですよ。
うちの職場は、協調せんといけんけど
基本個人プレーなので
国人衆に近いものがあるんですが
・・・まあ、意見のまとまらんこと。
今までのことを進めるなら問題ないんですが
ちょっと今までと変えようとしたり、
ベテラン同士で意見が対立しようもんなら
毎回2時間近くかかります。終業時間過ぎてんのに・・・。

よく、防芸引き分け時に結論がなかなか出なかったのは
元就さんの策だとか言われますが
それ、絶対違います。
ただ単に結論出んかっただけじゃけえ!
と思うのです。
隆元の書状みると、
大殿と殿の意見が分かれて下もはっきりよう答えを出せれんかった。
というのがよう分かります。

それからp99の人国記から引用した安芸の部分。
 「安芸
  当国の風俗は性質実多き風なれども
  気自然と狭くして、諸人ひかへて人を先だて、
  人の善悪ともに判する事なく、己々が一分を守る風なり。
  之依って、抜群なる人少なし。
  世間の嘲りを恐るる事なき故。
  頼もしげなき様なれども、底意は実義より起これば善き所多し。
  殊に佐伯・沼田・賀茂の人健やかにして、二心表裏の風なし。」

 (人国記より)

ううん、岩波の人国記と訳が違うようですが
本では岩波の人国記から引用してあるので
「抜群なる人少なし」の部分が
「唯 己々が一分を振る舞う意地にして抜きんでたる人
 千人に十人としこれ無くして」

なんですが、注目すべきはここ。
「諸人ひかへて人を先だて」
要は
「皆、控えめなので自分から先に出るのではなく
 人を先に立てて」


・・・・。隆元と元就の家督相続問題もこれですね
「ワシもう本気で隠居する!」
「何言うてんですか!私には無理です!
 父上が隠居するなら私も隠居する!!」

上に立つ、人より先に出るのが嫌なので
人を押し出す。
あ、うん。

因みに続き
「ワシも70過ぎたし、もうええ加減に隠居した・・・。」
「何言うてんですか!じいさま!
 父さんは40まで後見してるのに
 僕は16で見捨てるんじゃね!!」

あの親にしてこの子あり。を地でいってます。
でも、毛利家だけかというとそうではなく
防芸引分では、大内と引き分けるぞ!
で、毛利家に付くと言いながら結局多くの国人衆は日和見。
かといって、大内家が滅びて防長計略になった時も
国人衆の中で毛利家がリーダー的な存在になるのを疎んじた形跡がない。
むしろ、元就世代で従った国人衆はどうしてそこまでというぐらい
進んで下について働いてます。
コントでいう「どうぞ、どうぞ」状態だったといっても過言じゃない・・・。

それから、
「己々が一分を守る風なり。」
本では、毛利家が天下を目指さなかったのは
限界をわかっていたからだとされていましたが
そもそもこの気質があったからではないかなと。
天下を目指すな、今取っている領地さえ守ればいい。
という考えはなかなか他所の方には理解されないんですが
・・・大儀ぃ。
という意識が根本あるんです、広島人。
他所を占領しても、そこを支配するには気を遣うし
そもそもそこまで出張せんといけんし、
だったら地元でええじゃん。
となるんです。
後半、広島から移民が多く出たことも触れられてましたが
ハワイに行こうが、ブラジル行こうが
北海道に行こうが地元出ることには変わらん。
どうせ地元を出るなら全くの未知の新天地に行ってみよう。
というぶっとんだ発想は、海賊的な考えというよりも
裏返せば地元でなければどこも同じ。
という強固な地元意識があるからなのかなと。
だから地元出る気が無い=天下取る気はない
に繋がるのかなと思いました。

それから
世間の嘲りを恐るる事なき故。
これも隆元が将軍から和睦を求められた時に
「将軍だろうが世間から何と思われようと知ったことか」
と言ってます。
まあ、あとちょっとで陥落するのに余計な邪魔したのは将軍ですけど。
こうと決めたらむしろ権力者に食ってかかるなあと。
ただ、普段はそんな大それた考えなんて抱かないので
他県からこちらに派遣されたかたに言わせると
「他所よりも上の言う事をよく聞いて働いてくれる。」
らしいです。
だからまあ
「之依って、抜群なる人少なし」
とリーダー的な存在になる人が少ないと言われているんだろうなあと。

それから山口での話。
うん、山口市行くと
「大内氏万歳!毛利?知らんよ。」
と若干見下されてる扱いです・・・。
いや、でも大内氏って内紛で滅びたようなもんじゃし、
生き延びているってことは
あなた方の御先祖は毛利氏に臣従したってわけで
毛利氏家臣になったわけだからと毎回思うんじゃけど。
・・・ううん。
とりあえず、
「江良、生意気だから殺していい?」
と隆元が思った心境に毎回共感してます。
多分、昔もこんなだったんだろうなあと。

あ、でも山口のことは歴史云々抜きに好きです!
もし見知らぬ都道府県出身者だらけの集まりがあったら
山口出身の人に一番に声掛けます!
多分、よっぽどの事が無い限り
友達になりやすい県なので。

で、メインの経済的な話。
アンデルセンの冷凍パン生地の話なんかは
吟醸酒を生みだした杜氏さん達にも通じるところがあって

「儲けよりもこの技術の素晴らしさを伝えたい!!」

あ、うん。広島の物づくりには職人魂が根本ありますもんな。
最後の章の「ニッチを磨き続ける」なんて
まさにそれだなあと。
「雨後の月」は私も好きな銘柄名のでよく飲むんですが
経営難で苦しんでいるのに良い酒造りで逆転。
そんな物語があったなんて知らなかったです。
基本、広島の酒は甘口から辛口、
大吟醸からどぶろくまで揃うんですが
地域毎に酒を作っているので酒造りの会社は小さい規模が多く
それぞれに苦労されているんだろうなあと。

まだまだ飲んだことのない銘柄もあるので
友と一緒に飲み歩きたいものです。
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Author:トロロヅキ
主に毛利元就から浅野長勲までの安芸の歴史に関するブログです。初めての方は目次へどうぞ。

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