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「瀬戸の鷹 小早川隆景」を読んで

友から「瀬戸の鷹 小早川隆景」という本を借りました。
(泉 淳著 叢文社 1989年発行)
元就さんが広島弁だし、基本登場人物が広島弁(正確には備北言葉?)。
と聞いていたので、わくわくしながらページを開きました。

物語は郡山合戦の少し前から。
武田氏家臣熊谷氏の話からスタート。
元春の嫁さんの叔母さんの腰入りが
熊谷信直と武田光和の間にひと悶着を起こします。
そんな感じで、全国的にはマイナーな安芸国人達の名前が
ばんばん出てくるんですが、
当時の安芸の流れを知るには分かりやすいかと思います。

このごたごたの後、毛利家が出てきます。
そして元就さんの最初の一言

「はあ、はぶてちょらいな。」

・・・・おお!広島弁じゃ!!
ちょいと違和感あるけど広島弁!!

「はぶてる」は、「むくれる」という意味なんですが、
これを使うとは作者の人は広島の人かな。
そう思って裏のカバーを見ると、
高知県生まれ

・・・・あれ。

でも、文中の広島弁にそこまで違和感ありません。
同じ西日本だからでしょうか。
あ、でもやっぱり作者が土佐の人だなと思う箇所は何箇所かありました。
例えば、創作人物の船大工の従兄弟
彼らは土佐と紀州生まれながら、
紀伊水道を通じて親戚関係という設定です。
・・・船は今も昔も瀬戸内海の方が盛んですが、まあそこはおいといて。
なんで南蛮のガレオン船を作れるんだとかそこもおいといて。
水軍の将の隆景に大きな影響を及ぼす人物として出てきます。
瀬戸内海とは違う外洋の広さ。
補陀落渡海という慣習。
世界はどこまでも続いていると根っから思う土佐人気質と
島に囲まれ、穏やかに守られている安芸人気質は違うんだなと思いました。

話を元に戻して、このお話の元就さんについて。
当時の毛利家は尼子と大内に挟まれた地方領主。
隆景の誕生時はまだ隣の甲立すら敵対状態。
元就は幼馴染の世鬼茂十郎と共に戦国の世を駆け抜けます。
この茂十郎と元就さんのやりとりが、いい!
多治比時代からの幼馴染で元就さんを「松様」と幼名で呼ぶ仲。
実際のモデルは平佐就有・就之と本物の世鬼さんと志道広良を合わせて
親友パラメータをマックスにし、
忠義メーターがふっきれて、
お前は越南で米国と戦でもしてきたのか、
と思うぐらいゲリラ作戦が得意な人物です。

この茂十郎と元就さんで始めたのが
「ぼくの考えた最強の籠城戦」
郡山の全山要害化は尼子攻めの後と今は言われていますが、
尼子の来る前にこれでもかと山を切り開き、
罠を至るところにしかけ、2人で尼子を追い出します。

作者の方は戦前生まれ。
戦争による人間の醜い部分や悲惨な部分も胸に迫るものがありました。
もっとも、戦後生まれが半数を超えてかなりたった1989年発行の本なので
大分オブラートにされちゃったんだと思いますが、
戦争を経験した人の描写は真に迫っています。
特にこの尼子が郡山に攻める前の播磨侵攻。
ついつい忘れがちですが、この頃畿内まであと一歩
のところまで尼子は東進していて領土最大域。
ただ、播磨に攻め入った尼子はそれ以上進むことができませんでした。
尼子氏研究で有名な長谷川先生が
「尼子は何をしたかったのかよく分からない・・・・。」
と頭を抱えるほど本当に謎に満ちている播磨攻め。
この播磨攻めの時に小寺氏などが出てくるのですが
ああ、そうかまだ黒田官兵衛のお父さん世代だと
改めて隔世の感を感じました。

郡山合戦の後、隆景は養子に行きます。
後に両川体制と言われる小早川との養子縁組ですが、
最近は資料から、大内氏が主導し、元就はあまり乗り気でなかった。
という説が有力なのですが、古い本や古い引用を率いた物は
未だに雪合戦ネタを引きずっていることが多いです。
が、この隆景本は他と違って竹原にし殿と幼少期の隆景のからみがある!
竹原にし殿は興元の娘で、幸松丸の姉(だったはず)。
隆景にとっては従姉です。
ただ年の差は結構あります。
幸松丸誕生が永正12(1515)年、興元没年が永正13年(1516)で、
隆景誕生が天文2年(1533)なので少なく見積もって17歳差
親子でもおかしくないぐらいです。
実際、杉の大方と元就の年の差は15歳ですし。
竹原入城後、1年足らずで実母の妙玖が亡くなるので
このお話のようにお母さんのように慕っていたのかもと思いました。

毛利さんとこらしいというか、どの家族も仲良しで
その何気ない家族の会話があったかくていいです。
隆景と問田の大方も初々しくて、
この二人なら高野山で逆修墓を夫婦で建てるだろうなと思いました。
この夫婦でいる時の隆景が可愛いです。
あとは、景様でした。
初っ端から景様でした。

軍の規律を乱した輩は一刀両断、
体は子ども、頭脳は大人、どんな相手も論破する。
父さんのやることもおかしいものはおかしいときっぱり。
・・・まあ少し作者の思いを代弁しているような箇所もありましたけど、
やるべきことはためらわない。

あ、景様だ。これ。と思いました。
隆景が主人公の小説は、あの長い人生を小説化するにあたって
かなり端折られて物語が進むことが多く、
内面描写が少なかったり、登場人物も絞られていたりすることが多く
物足りないことが多いです。
でも、この小説は隆景の心情も追随できましたし、
人数も多く出てくるのですが、さらりと流れるのでさほど苦にはなりません。
読んだ本の中ではかなりお薦めの部類です。
ただ、難をいえば、「郡山合戦」から「厳島合戦」まではとてもボリュームあるのですが
それ以降はかなり駆け足です。
前半のペースで進むと鈍器レベルの厚さになるので仕様がないのでしょうけど
でも後半ももっとじっくり書いてあれば司馬さんを優に超えるベストオブ歴史小説。
だったのに、そこが惜しいなと思います。

言うても、隆景以外の人物も魅力的に書かれているので
読んでも損はないと思います。

「熊より簡単だな。」
と、千人切りする元春
がおります。
赤ちゃんだった隆景をおんぶして子守りする隆元がいます。
冷めた視点からの戦の愚かさ、人の醜さもある一方で
家族の温かさや人のぬくもり、
少し前にはありふれていたちょっと懐かしさを感じるような
そんな本でもあります。
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Author:トロロヅキ
主に毛利元就から浅野長勲までの安芸の歴史に関するブログです。初めての方は目次へどうぞ。

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